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海外の『ルック•オブ•サイレンス』のレビューを読む 海外ブログレビュー

今日の記事は、海外ブログが発表した映画『ルック•オブ•サイレンス』のレビューを紹介する海外ブログレビューです。
今回の記事では、海外ブログの映画レビューだけではなく、『ルック•オブ•サイレンス』のインドネシアでの反響を映画プログラムを参照しながら紹介します。

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本日の記事では、2つの海外ブログの映画レビューを紹介します。『ルック•オブ•サイレンス』は姉妹作『アクト•オブ•キリング』ほど複雑な構造の映画ではないので、レビューも目を見張るほど斬新ではなく、比較的穏当な内容となっています。

ひとつめに紹介するのは、イギリスの有名一般紙ガーディアンのレビューです。このレビューでは、加害者と対面するアディの態度を賞賛しています。虐殺の被害者の家族が加害者と会うというシチュエーションでは、被害者の家族が怒りに我を忘れたり、逆に恐怖で萎縮したりしてもおかしくはありません。しかしながら、『ルック•オブ•サイレンス』の主人公とも言えるアディは、怒りにも恐怖にも流されることなく終始毅然とした態度で加害者を問い質していました。『ルック•オブ•サイレンス』が感情に訴える安っぽい作品に陥らなかったのは、アディの態度に多くを負っているように思われます。

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ガーディアンのレビューでは、ときおりスクリーンに写されるインドネシアの光景の美しさも賞賛しています。確かに映画中のインドネシアの森や、のどかに暮らしているように見える村の様子を見ただけでは、かつて虐殺があったとは到底考えられません。しかし、『ルック•オブ•サイレンス』の素晴しさは、こうした美しい光景やのどかな生活が偽りの歴史のうえに築かれていたことを暴くところにこそあるのです。

紹介するもうひとつのレビューは、アメリカの映画レビュー集計サイトmetacriticで最も読まれたレビューであるニューヨーカーのものです。このレビューで興味深いのは、『ルック•オブ•サイレンス』はホイッグ史観を批判しているという論点です。ホイッグ史観とは、歴史は常に正しい者によって更新される、あるいは勝者こそが歴史を作ると捉える一種の進歩史観です。虐殺の加害者が現在でも権力を握っている現実を記録した『ルック•オブ•サイレンス』を見れば、ホイッグ史観がまやかしのように思われてきます。

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インドネシアでのプレミア上映会の様子を写した画像。舞台中央にはアディがいる。

インドネシア国内での『アクト•オブ•キリング』初回上映が秘密裏に行われたのに対して、『ルック•オブ•サイレンス』は政府機関のお墨付きを得て、インドネシア最大の劇場で封切られました。その会場にはアディも挨拶に来て、10分にも及ぶスタンディングオベーションがあったそうです。

しかし、軍と警察の息がかかっていると思われるチンピラたちが、上映を妨害すると脅迫する事件も起きました。軍と警察は安全確保という名目で、多数の映画館で上映を禁止しました。この事実上の検閲はインドネシアでも反発を招き、インドネシア国家人権委員会は上映禁止を取り下げるように活動しています。

『アクト•オブ•キリング』『ルック•オブ•サイレンス』は、人間の暴力性という普遍的な題材に安易なメロドラマに流されることなく真摯に取り組んでいることからしても賞賛に値する真面目な映画です。ただこの2作を独創的なものにしているのは、映画の可能性を深く追求しているから、とブログ作者には思われてなりません。 

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海外の『アクト•オブ•キリング』レビューを読む 海外ブログレビュー

今日の記事は、海外のブログニュースを紹介する海外ブログニュースレビューです。
今日紹介するブログニュースは、映画『アクト•オブ•キリング』をレビューしているブログニュースサイトをふたつ採り上げます。

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ひとつめに紹介するブログ記事は、イギリスの有名一般紙”the guardian”の『アクト•オブ•キリング』をレビューしたものです。

ガーディアンのレビュー記事におけるキーワードは、”surreal”(シュールレアル、超現実)です。『アクト•オブ•キリング』の特異性は、インドネシアで起こった虐殺の加害者が、当時の虐殺を自分たちで映画を作って再現するという演出に由来しています。この当時の虐殺の再現が、リアリスティックに表現されるのではなく、むしろ演者=加害者によって過剰に脚色されます。ガーディアンは、この荒唐無稽な脚色をsurrealと形容するのです。

ガーディアンのレビューは、こうしたsurrealな映像がアンリ=ジョルジュ•クルーゾーの未完の映画『インフェルノ』を連想させると続けます。『インフェルノ』は未完の作品ながら、一部残っている映像をYoutubeで視聴することができます。その映像と、『アクト•オブ•キリング』で最もシュールな部分と言える滝の下で殺害した共産主義者の亡霊から感謝の印としてメダルをもらうシーンを比べると、確かに極彩色にきらめく感じが似ていなくもないです。もっとも、『インフェルノ』の映像はモダンアートを連想させるのに対して、『アクト•オブ•キリング』はエスニックな伝統が全面に出ているという大きな違いがあります。



レビューでは加害者がインドネシアの国営テレビに出演して英雄扱いされるシーンを引き合いに出して、まるでオリバー•ストーンが監督した『ナチュラルボーンキラーズ』のようだと述べています。

もうひとつのレビュー記事は、全米各地の映画批評を集計して得点を付けるmetacriticからのものです。metacriticが集計した『アクト•オブ•キリング』のレビューのなかで、最も多く読まれた記事が”Portland Oregonian”のレビューです。このレビューにおいても、『アクト•オブ•キリング』を独創的な映画にしている特徴として、加害者の演技=虚構と加害者の現在を撮影した現実の併置を指摘しています。

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『アクト•オブ•キリング』の主人公アンワルは西部劇が大好きで、とくにジョン•ウェインがお気に入りだと劇中で言っている。ジョン•ウェインは自他ともに認める「強いアメリカ」を象徴する俳優である。画像はジョン•ウェインの出世作『駅馬車』の1シーン。

レビューのそのほかの論点として興味深いのが、『アクト•オブ•キリング』のなかに認められるアメリカ文化帝国主義です。映画のなかで加害者たちは、ちょうど虐殺に加担した若い頃はアメリカ映画が大好きだったと言っています。虐殺に先立つスカルノ政権は、共産主義政府だったのでアメリカの政治的•文化的影響力は制限されたものでした。しかし、虐殺が起こる原因ともなったスカルノからスハルトへの権力の委譲は、一説には共産主義勢力が拡大することを恐れたアメリカ政府が後押ししていたとも言われています。いずれにしろスハルト政権になってから、インドネシアはアメリカの政治的•文化的影響を強く受けます。レビューでは、そうした影響が虐殺の加害者の映画の嗜好にも表れていると指摘しています。

ブログ作者は『アクト•オブ•キリング』の記事を書くにあたり、日本のレビュー記事もいくつか読みました。そうしたレビューを読むと、どちらかと言えば倫理的•政治的文脈で批評するものが多い印象を受けました。対して海外のレビュー記事は、映像比較論あるいはメディア論的な切り口で批評しているものもあり新鮮に感じました。

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デンマーク国立美術館開催『Cosplayer! Manga Youth』展 海外ブログレビュー

今日の記事は、海外ブログニュースを紹介する海外ブログレビューです。
今日紹介する記事は、ブログニュースではなくデンマーク国立美術館で今年3月に開催された『Cosplayer! Manga Youth』というコスプレを題材とした美術展を紹介します。

Cosplayer! Manga Youthの公式サイトは、こちら

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日本のコスプレ文化が海外に波及しているのは周知の通りですが、デンマークでは国立美術館でコスプレについての美術展が開催されていました。

デンマークでは1990年代から日本のアニメがテレビで放送されるようになり、現在20代の若者は日本のアニメやゲームを言わば幼少期の原風景として育ってきました。デンマークのコスプレ文化と日本のそれとの違いは、デンマークは日本のアニメだけではなくディズニーアニメのようなアメリカのポップカルチャーもコスプレの対象となっていることです。近年ではJ-Popcomという日本のコミケのようなイベントが毎年開かれ、コスプレイヤーは自作のコスプレを披露しています。

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上段右のの画像は、アニメ『プリンセスチュチュ』に登場する「みゅうと」。上段左はみゅうとのコスプレをしているデンマークのコスプレイヤーHimo。彼女のFacebookはこちら。中段右は『プリンセスチュチュ』のキャラクターである「るう」。中段左はるうのコスプレをしているデンマークのコスプレイヤーKelevar。彼女のFacebookはこちら。下段右はアメリカのアニメ『アナスタシア』のパッケージ画像。下段左はアナスタシアのコスプレをしているデンマーク人のEnilokin。彼女のFacebookはこちら

美術展では、デンマークで有名なコスプレイヤーの写真が展示されています。上の画像は、日本のアニメ『プリンセスチュチュ』にインスパイアされたコスプレです。『プリンセスチュチュ』はバレエを題材としたアニメなので、画像のコスプレは日本のアニメを経由してバレエが生まれた西洋に本家帰りしたビジュアルであると言えます。オリジナルのアニメに比べてコスプレは、日本人がコスプレするよりリアルなバレエに近づいている印象を受けます。

上の画像には、アメリカのアニメ『アナスタシア』にインスパイアされたコスプレもあります。『アナスタシア』は帝政ロシア期の皇族の最後の生き残りと噂されたアナスタシアを題材としたアニメです。こちらはオリジナルも欧米圏のものなので、コスプレに何の違和感も感じられません。




この美術展の目玉のひとつにデンマークに初めてプリクラが上陸したことが挙げられます。プリクラは海外から見た場合、非常に奇異な文化のようで美術展の説明では”a kind of digital plastic surgery”(一種のデジタル的な整形手術室)と表現されています。またプリクラの奇妙さを実証した日本在住の外国人が作った動画もYoutubeにありました。

日本政府は本年度クールジャパンを海外に輸出するために400億円の出資を行っています(出典の資料は
こちら)。現在日本の企業で最もブランド力があるのはトヨタ自動車ですが、近い将来GoogleかAppleが自律自動車のOSを開発するので、自動車をはじめとしたハードウェアの価値は下落することが予想されます。クールジャパンに代表されるようなソフトコンテンツで世界的に優位な位置を占めることが、今後の国際経済政策で求められることのように思われます。


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『マッドマックス、その破壊的ファッションの系譜』 海外ブログレビュー

 今日の記事は、海外ブログニュースを紹介する海外ブログレビューです。
今日紹介する記事は、映画『マッドマックス 怒りのデス•ロード』にまつわる海外ブログニュースの記事です。

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やや投稿された日付(2015/5/30)は古いですが、アメリカ版WIREDの記事では小説家やSF小説雑誌の編集者による鼎談が紹介されています。鼎談参加者が一様に述べているのは、『マッドマックス ヒューリーロード』(英語原題)が描いている世紀末的(英語ではpost-apocalypticと表現します)世界観は、決して時代遅れなものではなく、むしろ核戦争の恐怖と可能性をいま一度思い起こさせるものなのです。

もっとも、鼎談者のひとりであるカリー•ヴォーガンは、現在では核戦争の恐怖はエボラ菌やゾンビウイルスの恐怖に取って代われていることを指摘しています。エボラ出血熱は、その高い致死性から昨年世界を震撼させたことは記憶に新しいところです。ゾンビウイルスからインスパイアされた映画には、最近では『ワールド•ウォーZ』がありました。現在でも、現実の問題として韓国でMERSの感染被害が報告されているので、パンデミックの恐怖は確かに核戦争のそれよりは実感し易いかも知れません。

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左の画像はアメリカのボンデージモデルのエミリー•マリリン、右の画像は「メタル•ゴッド」の愛称で知られるヘヴィメタルバンド、ジューダス•プリーストのリードヴォーカルのロブ •ハルフォード

マッドマックスシリーズが醸し出す世紀末的世界観を語るうえで、忘れてはならないのは衣装です。マッドマックス2および3の衣装をデザインしたのは、オーストラリア出身のデザイナー、ノーマ•モリソーです。彼女は、マッドマックスシリーズを手がけた頃から映画コスチュームのデザインのキャリアが始まり、この頃にはセックスピストルズに関する映画の衣装も担当しています。

マッドマックスシリーズの衣装は、様々な先行ファッションを寄せ集めたものです。具体的には、パンクロック、メタルロック、SMのボンデージファッションの影響を受けています。とくにボンデージファッションに関しては、マッドマックスの衣装をデザインしていた頃、モリソーが住んでいた場所の近くにあったSMショップに強くインスパイアされました(この逸話の出典はこちら)。

マッドマックスシリーズ以降にも、モリソーはオーストラリア映画の衣装デザインを手がけています。有名なことろでは、クロコダイルダンディーシリーズ、そして『ベイブ/都会に行く』です。ちなみに『ベイブ/都会に行く』の製作と監督は、マッドマックスシリーズを手がけたジョージ•ミラーです。

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左の画像が『マッドマックス サンダードーム』のティナ•ターナーの衣装、右の画像がクリストフ•デカーニンが2010年春/夏パリコレで発表した衣装

マッドマックスシリーズの衣装は、後のファッションデザイナーにも大きなインパクトを与えました。例えば、フランスのファッションブランドBalmainのデザイナーであったクリストフ•デカーニンは、2010年春/夏パリコレでティナ•ターナーがマッドマックスで着た衣装にインスパイアされた作品を発表しています。ちなみにティナ•ターナーの衣装は、実際に32kgもの重量がありました。

『マッドマックス 怒りのデス•ロード』の衣装デザインを手がけたのは、モリソーではなく、ジェニー•ビーバンです。彼女に取材した
インタビュー記事によれば、一見奇抜に見える衣装にも、終末戦争以降の世界で生き残るための合理的なバックストーリーを考えてデザインしています。例えば、悪役イモータン•ジョーの馬の歯形を模したマスクは、汚染された大気から身を守る機能を果たしているのです。

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イモータン•ジョーのもとから逃げ出す5人の妻たちの衣装は、ミラーが観たあるドイツのバレエ映画のコスチュームにインスパイアされたものです。劇中で唯一美しい肌を露にしている5人の妻たちの衣装は、荒涼とした世界においては健康で若い女性が最も貴重であるという事実を強調しています。

『マッドマックス 怒りのデス•ロード』の衣装は、前世紀のマッドマックスシリーズほど独創的ではないように感じられるものも、改造車とともに荒々しくも厳かな画作りに欠くことのできないものとなっています。本作は、ほぼ前編がカーアクションであるという表面的な特徴とは裏腹に、各分野のプロフェッショナルが集って極めてシネフィル受けする映像美を追求した作品になっているのではないでしょうか。

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『アップルは音楽ストリーミングの勝者になれない。なぜならまさにアップルだから』海外ブログレビュー

 今日の記事は、海外ブログニュースを紹介する海外ブログレビューです。
今日紹介する記事は、先日発表されたApple Musicについて批評したアメリカ版WIREDのタイトルが挑発的な記事です。

オリジナルの記事は、こちら

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先日催されたWWDC2015において、Appleは新音楽サービスとしてApple Musicを発表しました。このサービスは簡単にまとめると、音楽ストリーミングサービスとデジタルラジオを使った音楽レコメンデーションサービスを統合した有料音楽サービスです。

音楽ストリーミングサービスのセールスポイントは、ユーザがiPhone内にダウンロードした楽曲やストリーミング視聴履歴を分析して、音楽の専門家が楽曲をすすめてくれるところです。ラジオを使った音楽レコメンデーションサービスでは、Beats1と呼ばれるラジオ局からAppleが選出したDJが楽曲を流します。従来のラジオ音楽番組との違いは、ユーザが楽曲の選曲についての設定をすることによって、流れる音楽を調整することができるインタラクティブ性があることです。

アメリカ版WIREDの記事では、音楽ストリーミングとラジオによる音楽レコメンデーションサービスの両方に関して、既にSpotifyやPandora Radioといった先行するサービスのシェアを大きく奪うことはないと評しています。というのも、Apple Musicは先行音楽サービスに対して、価格あるいはサービス内容に大きな差別化を打ち出していないからです。そう評したうえで、Apple Musicはむしろ、AndroidユーザをiPhoneユーザに転向させる効果があると予想しています。Apple MusicはAndroid端末にもリリースされますが、UXの質という点から見れば、Apple MusicはiPhoneで楽しむ方が良いに決まっています。Apple Musicは、音楽市場ではなくスマホ市場のシェアに変化を起こすサービスなのです。

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上のグラフは、2014年のオリコンシングルランキングTOP50における主要アーティストグループのチャートイン頻度を割合を表わしたもの。AKB系とジャニーズ系で80%を占める。下のグラフは、2014年オリコンシングルランキングTOP50のCD売上げ枚数の合計に占める主要アーティストグループの割合を表わしたもの。AKB系とジャニーズ系で90%近くを占める。グラフはこちらのデータをもとに作成した。 

アメリカと音楽市場の事情が大きく異なる日本では、当然ながらApple Musicがリリースされる意味合いも違ってきます。日本におけるApple Musicに対する先行サービスは、You Tubeとニコニコ動画です。Apple MusicをYouTubeおよびニコニコ動画と差別化するポイントは、人間の音楽の専門家がユーザに楽曲をすすめるところです。Apple Musicの日本の音楽市場に対する影響は、楽曲レコメンデーションがどのような方針で行われるかによって、異なってくるでしょう。そうした影響について、少なくとも2つのシナリオが考えられます。

ひとつは、極端な寡占状態になっている日本の音楽業界のニーズがレコメンデーションに反映される場合です。この場合、Apple Musicは日本のメジャー音楽レーベルからシェアを奪うというよりは、コアなファンが新たにApple Music経由で楽曲を視聴するに留まるでしょう。Apple Musicを始めるきっかけも、楽曲レコメンデーション機能ではなく、Connectと呼ばれるアーティストとファンの交流機能を使うことが主要なものとなるでしょう。

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もうひとつのシナリオは、Apple Musicがあくまで音楽性に基づいて楽曲をレコメンデーションする場合です。この場合、日本の音楽市場に多様性を回復させる可能性があります。なぜならアーティストは、既存の日本の大手音楽レーベルを経由することなく、Apple Musicというしがらみが少ないプラットフォームを利用して直接ファンを獲得できるようになるかも知れないからです。

Apple Musicが日本の音楽市場の寡占状態を助長するか、あるいは解体するかは予断を許しません。ひとつ言えるのは、日本のコンテンツ産業において音楽業界が最もガラパゴス化が進んでいる市場であることです(例えば映画では、現在でもハリウッド映画がランキングの上位に表れます)。上に挙げたふたつのシナリオとは別に、そもそも閉鎖的な日本の音楽業界においてApple Musicがユーザを獲得できない可能性がもしかしたらいちばん可能性が高いかも知れません。Apple Musicをもってしても、このガラパゴス状況に風穴を空けるのは容易ではない、と言わざるを得ないのです。

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吉本幸記

Author:吉本幸記
元エンジニアのフリーライター。テクノロジー系の記事を執筆している。アートにも関心がある。美術検定3級取得

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