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『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989』 感想 ※ネタバレなし

今日の記事は、美術展を紹介するレビュー記事です。
今日紹介する美術展は国立新美術館で開催されている『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989』です。

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総合評価:★★★★☆(星5つ満点中星4つ)

『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989』は、その名の通りいわゆる「クールジャパン」と総称される造形分野の歴史を1989年から通覧することを主題とした美術展です。なぜ1989年を起点としているかというと、この1989年こそ手塚治虫が死去した年だからです。この美術展は、手塚治虫が築いた礎から「クールジャパン」的なものが成熟していく約四半世紀を各分野の代表作を展示して図解することを試みています。

ブログ作者は「クールジャパン」的なものについて一般的なヒトより少し慣れ親しんでいる程度の人間なので、ガチの「オタク」ではありません。オタクならざるブログ作者が、美術展で展示している個々の作品についてコメントを付したところで、顰蹙を買うのが関の山です。ただ幸いなことにこの美術展には、開催に合わせて刊行された公式ガイドブックがあります。このガイドブックは2500円とやや値が張りますが、門外漢でも各分野の歴史を通覧できる非常に完成度の高いものとなっています。そこで以下では、ガイドブックに記載された論文をもとに、「クールジャパン」を2つの切り口から分析していきます。その2つの切り口とは、ステーリーテリング、テクノロジーです。

ストーリーテリング
(参考資料:『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989』所収「メディアの横断と物語の変容」 大橋嵩行)
マンガ、アニメ、ゲームをサブジャンルとする「クールジャパン」的なものには、ジャンルの垣根を超えて共通に認められるストーリーテリングにおけるモチーフが指摘できます。
そうしたモチーフには「ファンタジー」「恋愛」「美少女戦士」が挙げられます。そして、この3つのモチーフのどれもが、起源に遡るとゲームに行き着きます。

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左の画像はトールキン生誕100周年の記念に刊行された『指輪物語の挿絵を描いたアラン•リーの作品。アラン•リーは映画『ロードオブザリング』のアートディレクターも務めている。右の画像はゲーム『ファイナルファンタジー』のパッケージ画像を描いた天野喜孝の作品。「剣と魔法の世界」を日本に輸入するにあたり、ビジュアル的には後述する空間を面的に捉える西洋的3D世界観から線的に捉える日本的2D世界観への翻訳が認められる。

中世ヨッローパ風のビジュアルによって構築される「ファンタジー」ものの起源は、当然ながら『指輪物語』や『英雄コナン』といった西欧のヒロイック•ファンタジー小説に求められます。ただし、このような小説群を愛読していたのは、一部のマニアでした。ファンタジーものが日本に定着する契機となったのは、PCゲーム『ウィザードリィ』に影響された『ドラゴンクエスト』、ならびに『ファイナルファンタジー』といったゲームでした。ちなみに『ウィザードリィ』は、『指輪物語』をゲームで再現しようとしたTRPG『ダンジョン&ドラゴンズ』の数値計算をコンピュータで実行させようとして誕生したのでした。ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』は今日で言うところの「JRPG」の起源となり、近年発表された『パズル&ドラゴンズ』『妖怪ウォッチ』はこうした「日本化されたファンタジー」の土壌から生まれたのです。

残るモチーフである「恋愛」と「美少女戦士」にも、その起源にゲームが指摘できます。「恋愛」については『ときめきメモリアル』が後続する恋愛シミュレーションの元祖でした。「美少女戦士」のモチーフの最たるものには『美少女戦士セーラームーン』があります。セーラームーンの世界観の直接的な祖先は、いわゆる実写の戦隊ものシリーズです。しかしながら、当時既にJRPGを介して定着していた主人公たちが敵を倒していくというゲーム的ストーリーテリングの影響も無視できません。「美少女戦士」は後に『カードキャプチャーさくら』『魔法少女まどか☆マギカ』に受け継がれます。

テクノロジー
(参考資料:『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989』所収「日本のCGアニメーションはなぜ独特なのか?」 大口孝之)
日本は、手描き風3Dアニメとデジタルアニメが同時に制作されている世界的に見て特異な市場です。その理由には、二つあります。

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左の画像は『アナと雪の女王』。右の画像は『シドニアの騎士』。『アナと雪の女王』の画像は、滑らかな陰影、輪郭線の不在といった西洋絵画の伝統が認められる。『シドニアの騎士』には、平板な陰影、輪郭線の強調といった日本画および浮世絵の伝統を読み取ることができる。

理由のひとつめは、日本のアニメの原作には手描きのマンガが多いことです。手描きのマンガを原作としているので、リアルなデジタル3Dアニメを作ると原作ファンに「コレジャナイ」とそっぽを向かれてしまいます。こうした状況のなか、手描きの風合いを残しつつ、デジタル化によるアニメ制作の合理化を両立させた手法として開発されたのがトゥーンシェーディングです。この手法は、デジタル3Dのように完全に滑らかな陰影をつけず、セル画調の段階的な陰影を施したうえで輪郭線を加えるものです。トゥーンシェーディングの手法を用いたアニメは近年増加傾向にあり、最近では『シドニアの騎士』があります。

理由のふたつめは、民族的な伝統です。日本のマンガおよびアニメ表現は、その起源を辿れば大胆な省略と平板な塗り、そして輪郭線による画面構成を特徴とする浮世絵や日本画があるという見方です。

対して西洋の絵画表現は、ルネサンス以降遠近法が支配的になったために、二次元的事物であるキャンバス上に面から構成される三次元的世界を構築する方向で発展しました。今日の主要な3Dモデリングアプリも、その設計思想の根底には遠近法があります。最近の脳科学の研究結果によると、西洋発祥の面による空間認識と日本的な線によるそれでは働いている脳の部位が異なることが分かってきました。つまり、日本における2D的なものへの偏愛は、歴史的•民族的な背景が契機となって生理的なレベルで刷り込まれた結果である可能性があるのです。

「クールジャパン」的なものを扱った美術展では、『ジョジョ展』『ONE PIECE展』のような個別の作品を対象としたものがあったものも、ひとつの造形運動として歴史的に捉えるものはもしかしたら今回が初めてではないでしょうか。現在進行形の造形運動である「クールジャパン」を振り返る『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989』は非常に価値のあるイベントです。

もっともブログ作者としては、多少不満に感じたことがあります。不満はふたつありまして、まずひとつは公式サイトが存在しないことです。国立新美術館のサイト内に美術展を紹介するページがありますが、率直に言ってビジュアル的完成度が低いです。もうひとつの不満が、「クールジャパン」が国際的に拡散していく歴史についての観点が抜けていることです。周知のように、日本のマンガ•アニメは海外のクリエイターにも影響を与え、最近では海外で再解釈された「クールジャパン」が輸入されたりもしています(最近では映画『パシフィック•リム』が該当します)。こうした不満点があるので、星がひとつ減って、総合評価は星4つです。「クールジャパン」の国際的拡散については、また違う美術展でぜひとも集中的に特集して欲しいものです。 


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間野内浩子展 @mina津田沼

 今日の記事はまったくの雑記です。
しかし、非常に意義深くもあります。

ブログ作者は、千葉県津田沼近郊に住んでいます。
今日の午後に新津田沼駅近くにある商業ビルminaで買い物をしていたところ、版画展に遭遇しました。
消しゴムを使った間野内浩子さんの版画展です。


作品_convert 

間野内さんは、消しゴム版画の創作歴は2年と短いながらも、受賞歴もあります。


プロフィール_修正_convert 

この作品から読み取れる様式は、ゴシックロリータ、いわゆるゴスロリです。ゴスロリの源流を西洋絵画史のなかに探っていくと、19世紀末の象徴派に行き着きます。間野内さんの画風に似た象徴派の絵画を探してみたら、オランダの象徴派画家ヤン•トーロップを見つけました。


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似たようなものとして他には、ゴスロリながらもロリータ色を弱めて、代わりにより官能的な作品を描いているバーニャ・ズーラヴィロフがいます。彼女は1980年ロシア生まれです。


バーニャ1 

バーニャ2 

間野内さん、トーロップ、バーニャの3人は「ゴス的なもの」という共通項を持っています。そのなかで野間口さんの作品は「日本的なもの」を感じます。その「日本的なもの」は、「萌え」からはズレたものも感じます。

ブログ作者は「クールジャパン」という言葉に違和感を感じている人間です。というのも、「クールジャパン」という言葉を使うと、避け難く「萌え」「オタク」「カワイイ」といったロリータ的なものがつきまとってしまうからです。「カワイイ」は「クール」かも知れない。しかし、クールなジャパンは「カワイイ」に尽きてしまうものではない。

間野内さんの作品から感じられた「カワイイ」からの「ズレ」は、ブログ作者の目を惹きました。

間野内さんがこのブログ記事を読む確率は極めてゼロに近いですが、もしも読んで頂けたら、応援しているので、このブログもたまには読んで下さい(笑)!

プロフィール

吉本幸記

Author:吉本幸記
元エンジニアのフリーライター。テクノロジー系の記事を執筆している。アートにも関心がある。美術検定3級取得

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