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360度動画《Pearl》批評

 今日の記事では、Googleが紹介している360度動画《Pearl》を批評します。

20160524_image_1.png 

Google Spotlight Stories」は、360度動画のなかでもストーリー動画(ストーリーを表現する動画)をピックアップして紹介するYouTubeチャンネルです。本記事で採り上げる《Pearl》は、VR関連のニュースを発信するブログニュースサイトの記事で知りました。


上に引用した動画は《Pearl》のトレーラーですが、この動画作品はぜひVRヘッドセットで作品自体を鑑賞することをお薦めします。

ブログ作者は、360度動画に非常に関心をもっています。360度動画の最大の利点は、鑑賞者の視線の変化に連動して、動画がインタラクティブに変化することです。この動画におけるインタラクティブ性は、既存の映画と比べた場合、鑑賞者が撮影された場所に居合わせているようなライブ感を強めます。実際、360度動画を集めているYouTube公式チャンネル「
360° Video」では、ライブ感を重視した作品が多数アップされています。

一方でブログ作者は、360度動画で既存映画 — 便宜上、これから定角映画と表記します — に匹敵するストーリーテリングが可能か、少し懐疑的でした。というのも、いみじくも
スピルバーグ監督が指摘しているように、定角映画のストーリーテリングの根底を成しているカメラアングルを、360度動画では鑑賞者が任意に変えられるからです。

しかし、《Pearl》を鑑賞して、360度動画においても限定的ながらストーリー動画が可能であることを実感しました。

《Pearl》の映像表現における特徴は、ふたつあります。ひとつめは、一人称カメラによる定点観測撮影です。一人称カメラとは、カメラのレンズの位置が鑑賞者の視線と一致するカメラ撮影法です。類義語には、カメラのレンズ位置と鑑賞者の視線が一致しない三人称カメラです。この術語は、ゲームにおけるFPS(ファーストパーソンシューティング)とTPS(サードパーソンシューティング)をイメージできれば、分かり易いと思います。

《Pearl》は、ある自動車の内部から一人称カメラで父親と娘の日々を、カントリー調の音楽をBGMにしながら、淡々と見せていきます。画面で何が語られているか、あるいは自動車のなかに誰が乗っているかを知るために、鑑賞者は自動車のなかを見まわす必要があります。

20160524_image_2.png  

《Pearl》の映像表現法のもうひとつの特徴は、時間表現です。時間表現を分析するために、やや唐突ですが、文学理論「物語論」を提唱したジュネットの概念を援用します。

ジュネットによれば、小説における時間表現は、物語における時間の流れ=「物語内容」と文章の実際の流れ(文字数やページ数)=「物語言説」の関係に着目して、以下の4つに分類できます(以下、wikipedia「物語論」から引用)。

  • 休止法 - 物語内容=0、即ち物語内容 <∞ 物語言説。つまり静止した情景を描写する場合。
  • 情景法 - 物語内容 = 物語言説。例えば会話の場面など、両者のスピードが一致している場合。
  • 要約法 - 物語内容 > 物語言説。物語言説を圧縮して語る、基本的な叙述。
  • 省略法 - 物語言説=0、即ち物語内容 ∞> 物語言説。つまりあったはずの出来事を記さず、話が飛んでいる部分。

以上の小説の物語構造を分析する概念は、実は映画に転用することが可能です。映画に転用するときには、物語言説の定義を「文字数あるいはページ数としての長さ」を「映像の再生時間」に変えるだけです。小説の物語論を援用して映画を分析する手法は、ブログ作者の独創ではなく、すでにシーモア•チャトマンが『小説と映画の修辞学』で展開しています。

《Pearl》の分析にもどると、この作品における時間表現は要約法を使っています。すなわち、定点カメラによって、5分程の映像で父と娘の20年近い日々を表現しているのです。

ライブ感を重視する360度動画では、時間表現として情景法が多用されます。つまり、鑑賞者が見ている時間と、映像における時間の長さが一致しているのです。一人称カメラ、情景法を使ってストーリーを展開している360度動画作品には、360° Videoにアップされている《Invasion! Sneak Peek 360》があります。



《Invasion!》のように情景法を用いると、動画で表現できる時間の流れに制限があります。動画の長さと同じだけの出来事しか表現できないわけですから。対して、《Pearl》は要約法を使っているので、5分の動画で20年間の出来事を表現できたのです。

360度動画に要約法を使った《Pearl》は、定角映画のストーリーテリングに一歩近づいたと言えます。しかし、定角映画における物語表現の基本構造は、三人称カメラ+要約法です。物語を表現するために自由にカメラ位置を変えることができ、かつ映画の再生時間に縛られない時間表現が可能になったことによって、定角映画は小説に匹敵する物語世界を構築できるようになったのです。

翻って、360度動画では三人称カメラを効果的に使ってストーリーを語ることができるのでしょか。現時点で判断するにはブログ作者には不可能です。ただ、あえて直観的に言えば、360度動画は定角映画とは別種の映像表現のジャンルとして、言わば系統的に分化して発展するような気がします。


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ブログ再開の予告

 お久しぶりです。

早いもので、もうゴールデンウィークも終わってしまいましたね。
そして、このブログを始めてから1年が経過しました。

さて、3月以降更新を中断していた本ブログですが
今月中に再開するメドが立ちました。

ブログ更新を中断しているあいだ
前回の記事でお知らせしましたように
あるテクノロジー系ブログニュースサイトの立ち上げに関わっていました。
そのサイトが辛うじて離陸したので、ようやく他のことができるようになりました。

ちなみに立ち上げに関わったブログに投稿した記事には、以下のようなものがあります。

 • VRヘッドセットはヒトをキーボードから解放する ーVRに対応したUI最前線ー

 • ディープラーニングの次に来るものーより人間的な学びを目指してー

 • コンピュータは人間に「汝自身を知れ」と語りかける ー人間を再定義するものとしての人工知能ー

他にも多数記事を投稿しているのですが、サイト運営側の都合でまだ掲載されていません。
掲載されましたら、当ブログにてお知らせします。

その他の動きとして、
現在、大手テクノロジー系ブログニュースサイトのギズモード•ジャパンのライタートライアル記事を執筆中です。
ギズモード•ジャパンのライター募集に応募したところ
書類審査がとおり、トライアル記事を5月21日までに提出することとなりました。

ブログの本格再開は、5月21日以降の今月中になります。


再開後のブログ運営は、今までと少し変える予定です。
というのも、twitterも活用することを検討しているからです。

あと、大きな目標として小説を執筆することを決意しているので
創作活動に関連した記事も投稿すると思います。

再開まで、もうしばらくお待ち下さい。



プロフィール

吉本幸記

Author:吉本幸記
元エンジニアのフリーライター。テクノロジー系の記事を執筆している。アートにも関心がある。美術検定3級取得

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