スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

イノベーションと反脆いもの、もしくは『反脆弱性』感想

今回の記事は、ナシーブ・ニコラス・タレブ『反脆弱性』についての感想を掲載します。

20170717-1.jpg

前回のブログ記事でブログ更新を一時休止するとお伝えしましたが、今後読書にいそしむにあたり、読書録をつけるのであれば、ブログを利用したほうがよいと思い、随時更新することにしました。

反脆弱性とは何か


20170717-2.jpg
『反脆弱性』において「反脆い」愛情を描いているとされている小説『失われた時を求めて』のなかの「スワンの恋」。美術商のスワンは、オデットに冷たくあしらわれて、さらに独占欲を駆られる。

「反脆弱性」という言葉は、その対義語である「脆弱性」といっしょに理解することが不可欠です。脆弱性とは、変化や不確実性が原因となって損失を被る性質を意味します。対して反脆弱性は、変化および不確実性から利得を得る性質です。ちなみに、変化および不確実性から損失も利得も被らない性質は「頑健」となります。

脆弱性と反脆弱性の事例は数多く挙げることができます。わかりやすいものとしては、「脆い」友情と「反脆い」愛情があります。友情はヒトの互恵的な関係ですが、その関係が安定しているあいだは、互いに利得を得ます。しかし不安定になると、時に壊滅的な損失を被ります。対して「反脆い」愛情は、関係が不安定なほうが当事者の感情を劇化させます。「道ならぬ恋」とような文学的モチーフは、愛情の反脆い性質を描いているのです。

歴史と反脆弱性


この反脆弱性と脆弱性の対概念は、実のところ、未来予想に活用することができます。「未来予想」という言葉で想像することは、「現在」より性能のよい製品やサービスに満ち溢れた世界、と考えるのがふつうです。しかし、未来には他の側面もあります。すなわち、未来においては脆いものは滅んでいるだろう、ということです。

脆弱性の定義とは、「変化や不確実性から」損失を被る性質、ということでした。この「変化や不確実性」のもっとも身近なものが、「時間」です。つまり、脆いものは時間が経てば必ず壊れなくなるのです。そういうわけで、未来とは現在に何かが追加されたものと考えるよりは、脆いものがなくなった世界、と捉えるのがより確実な見方なのです。

未来において脆いものが滅んで生じた空白は、おそらくは相対的に滅んだものより反脆い性質のものによって補充されることが多いと考えられます。しかし、その「反脆い」ものが具体的に何であるかは、容易に予想できません。というのも、あるものが「反脆い」かどうかは、「変化や不確実性」すなわち「時間」の試練に曝されることで確かめられるからです。簡単に言うと、「反脆い」ものは、歴史のなかで生き残ったものなのです。

まとめると、未来を予想するうえでより確実なアプローチは、「反脆い」ものを追加するよりは「脆いもの」を取り除く「引き算的なアプローチ」が有効、ということになります。

イノベーションと反脆弱性


以上の反脆弱性から見た「引き算」の未来予想は、イノベーションの実現に応用できそうです。イノベーションは、まずは破壊することから始めればよい、ということになります。脆いものはどの道こわれるのですから、人為的に早くこわして「反脆い」ものに置き換えたほうが、経済的にも倫理的にも正しいでしょう。このアイデアにもとづけば、イノベーションとは人工的に「時の試練」「自然淘汰」を起こすこと、と言うことができます。

無論、脆いものと置き換える反脆いものは、すぐには見つけることはできません。しかしながら、著書『反脆弱性』には、反脆いものを見つけるために「変化や不確実性」を人為的に発生させる方法が提案されています。その方法が「つつき回し」です。

「つつき回し」とは、一言で言えば試行錯誤です。「よさそうなアイデアはどんどん試せ、そして、成功するまで失敗しろ」という戦略です。「つつき回し」は、まさに自然淘汰を加速させるアプローチです。たくさん産んでたくさん死んだ末に、生き残るものを見つける、というわけですから。

こうしたつつき回しが成功している実例こそが、シリコンバレーのビジネスシステムです。Googleのプロジェクトでは、よく「早く失敗しろ」ということが言われるそうです。生き残る「反脆い」アイデアをより分けるには、無数の「脆い」アイデアを壊すことが不可欠なのです。

著書『反脆弱性』を読むと、ともすれば仕様や性能の上位互換のように捉えられてしまうイノベーションを、「自然の摂理」から見直すという治療効果が期待できます。

スポンサーサイト

プロフィール

吉本幸記

Author:吉本幸記
元エンジニアのフリーライター。テクノロジー系の記事を執筆している。アートにも関心がある。美術検定3級取得

最新記事

カレンダー

06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。