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表面世界の行方 (14) タンジブルアフォーダンスデザイン

前回の記事では、Apple Watch開発秘話を読み解くことで、質の高いUXをもたらすウェアラブル端末を設計するためには、スマートフォンを生み出したGUI的設計からの発想転換が求められることを確かめました。
今回の記事は、前回の記事を踏まえて、ウェアラブル端末とIoTを設計するための指針を提案したいと思います。 

この連載記事のはしがきは、こちら
この連載記事の目次は、こちら

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2015年発売予定のウェアラブル端末”Volvorii Timeless”。ハイヒールに貼られたE-Ink素材が様々な柄を表示する機能を実装している。デジタル処理できる模様というアイデアは、ファッションとテクノロジーの最適な調和を実現しているように思われる。しかし、この端末は柄の制御をスマートフォンから実行しなければならない。制御機構を靴の方に実装することはできないのであろうか。柄を変えたい時に、いちいちスマホを取り出すのが面倒な時もある。端末の詳細はこちらを参照。

 Apple Watchは、それ以前のウェアラブル端末の特徴であった「スマホと連繋するアクセサリー」や「高機能なヘルスメーター」とは一線を画した、真に新しいUXをもたらすデバイスになっています。Apple Watchが革新的なデバイスとなった理由は、ウェアラブルな端末であることの意味を再解釈し、その解釈に沿ってデバイスを設計したからのように思われます。こうしたApple Watchで実践された設計プロセスを一般化すれば、今後のウェアラブル端末とIoTデバイスの設計と評価に役立つのではないでしょうか。以下にApple Watchの設計アプローチからインスパイアされた設計ガイドラインを、タンジブルアフォーダンスデザインと名付けてアフォリズム風にまとめます。なおこの名前は、GUI的設計の限界を超える着眼点として触覚によるUI設計を重視することに由来します。このデザインアプローチは、以前の記事で言及したTUIが言わば設計理念だったに対して、より実践的な意味合いを込めています。

ウェアラブル端末とIoTデバイス設計のためのタンジブルアフォーダンスデザイン7ヶ条

1.汝自身を知れ
そのデバイスは何のために存在するのか。ユーザに何をもたらすのか。デバイスの存在意義は、暫定的にでもいちばん最初に決めるべきです。そして、その存在意義はできる限り熟考すべきです。Apple Watchは存在意義を決める段階で、既存のウェアラブル端末を凌駕することを約束されたようなものでした。この段階で「スマホと連繋する何か」で思考を停止していたら、その後のプロセスがどんなに成功しても凡庸なデバイスしか完成しないのではないでしょうか。

2.心(脳)が先。身体は後。
存在意義が決まったら、次はそれを実現する機能をリストアップします。この段階では、(腕時計とか生活家電といった)開発するデバイスの祖先にあたる装置の仕様に拘泥せず、自由に多くのアイデアを出すべきです。アイデアを数多く出して、良いアイデアとそうでないものを選別する過程で、次第に目指しているデバイスの本質と仕様上の制約が見えてくるのではないでしょうか。Apple Watchの場合は、相互作用する時間と画面サイズでした。

3.限界を知れ
実装したい機能を選別することを通して見えてくる仕様上の制約こそが、そのデバイスの本質的仕様となります。逆に言えば、この仕様上の制約が見えてくるまでは、実装したい機能を考え続けるべきです。
この段階から、ハードウェアの設計を着手するのが適切です。見つけた制約に違反するようなハードウェア作りは、デバイスの存在意義を損ないかねません。

4.限界を超えろ。わけても手で
制約を守りながら、より早く、あるいはより簡単に機能を実行する方法はないか。この段階でソフトウェアとハードウェアの連繋が重要になります。ソフトウェア上の洗練で足りるのか。ハードウェアを設計し直さないと克服できないのか。もっとも創意工夫、クリエイティビティが求められる過程と言ってよいでしょう。
限界をこえるアプローチとして、触覚による操作を見直すことが有効でしょう。脳波によるコントロールやテレキネシスが一般的ではない現状では、結局のところデバイスに触れなければなりません。Apple Watchはこの段階で、Digital Touch、感圧タッチという革新的なアイデアを出しました。

5.神は細部に宿る
かたちや大きさは存在意義や制約を満たしているのか。デバイスを構成するすべての要素について、リファインする余地がないか見直すことを忘れてはいけません。
ウェアラブル端末とIoTデバイスには祖先にあたる装置があります。その装置のディテールは参考になるでしょう。

6.デザインはファッション。ファッションはデザイン。
ウェアラブル端末とIoTデバイスの祖先にあたる装置は、歴史的に洗練されてきた見た目=ルックスを備えているはずです。祖先と同等のルックス上の洗練と多様性を、ユーザに提供する方法はないでしょうか。ウェアラブル端末とIoTデバイスは、もともとはなかったデジタル情報処理機能をモノに付加しています。スマホのようなネイティブな情報端末より一層ルックスやファッション性に配慮すべきです。

7.ユーザ幸福中心設計
コモディティ化したガジェットに溢れかえった現代では、何となく便利そうだったり、何となくカッコいいだけのモノを買ってくれるのは、一部のガジェットマニアだけです。そのデバイスを買って、ユーザがより快適な生活を送れるようになるのか。ユーザに幸福なUXをもたらすデバイスが支持され生き残っていくのでしょう。

 以上の7ヶ条は、デバイス開発者だけではなくユーザにとっても意義のあるものだと思われます。というのも、今後現れるであろうデバイスの出来映えを測る試金石となるからです。

 とは言うものも、これまで連載してきた記事はウェアラブル端末やIoTデバイスの今後の動向に対する関心からだけで書かれているわけではありません。この記事を執筆した本当の目的は、メディア史を独自の観点から振り返ることを通して、コンピュータのメディア体験を再解釈し、その未来を展望することです。Apple Watchを取り上げたのも、あくまで現在を代表するメディア体験を分析するためなのです。連載最後となる次回の記事では、未来におけるコンピュータのメディア体験を見ていきます。

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有名なクラウドファウンディングサイトであるkickstarterにはスマホに接続する「スマート」家電を開発するプロジェクトが多数存在する。画像はスマホから遠隔操作できるやかん「AppKettle」である。スマホからの遠隔操作によって、年にして33時間の時間の節約と節電が可能になるという。このやかんの開発者は『星の王子さま』の有名な一節を知らないのであろうか。地球に来た星の王子さまは、喉の渇きを止める薬を売る物売りに出会った。その薬を飲むと週に53分時間を節約できると言う。「節約した時間は好きなことをすればいいさ」と物売りは言う。「ぼくなら節約した時間でゆっくり水を飲むけどなぁ」と王子さまは思った。このプロジェクトは目標出資額が165000ポンドのうち64876ポンド(目標額の約40%)集まったところでキャンセルされた。開発会社のサイトに行くと2015年末から2016年初頭にはリリースするとアナウンスしている。こちらがkickstarterの該当プロジェクトのページ。

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吉本幸記

Author:吉本幸記
元エンジニアのフリーライター。テクノロジー系の記事を執筆している。アートにも関心がある。美術検定3級取得

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